お世話になっております。弁護士の井上大輝です。
コラムの3回目は、相続をテーマにしたいと思います。
仕事柄、ジュンク堂書店さんや大垣書店さん、丸善さんには頻繁に行くのですが、遺言や相続の棚を見るともう、かなりの数の本があります。行くたびに増えているように思います。
それだけ、皆様の関心も強く、遺言(そして終活)をどうするかということが、身近な法律問題になりつつあると実感します。
さらに、最近相続法の改正があり、遺言のために利用できる手続、遺言に残せる内容、相続の仕方に法的な疑問がある場合の解決の仕方等、様々な点の変更がありました。
民法の研究者の先生方による、詳しくて正確な本もすでに多く出ていますので、このコラムでは詳しい内容というよりも、僕なりに理解した新しい法律の仕組みを今後、説明できればと思っています。
さて、弁護士として活動している以上、遺言書を作りたい、というご相談をお受けすることは、それなりにあります。遺言を残すときに絶対気をつけないといけないこととして僕が思うのは、
(1)遺言を残すときに、本当に自分の意思だけで財産の残し方を決められているか
(2)遺言の中に財産の残し方やお墓のこと、御仏壇のことまで書かれているか
(3)遺言を残すことで、かえって残された家族の間でもめ事がおきないか
の3つだと思います。まずは、(1)のお話からしたいと思います。
(1)遺言を残すには、他の誰かの意思ではなく、遺言を残す人が自分の意思で、はっきりと残す遺言の内容を理解して行うことが必要になります。
もともと家族間の仲が悪かったり、疎遠だったりすると、残された家族の間で遺言の効力に疑問が持たれ、「お父さん(お母さん)があんなこと言うはずがない」「〇〇の入れ知恵だ」「あのときのお父さん(お母さん)の具合は悪かったから、あのときに書いた遺言なら無効だ」として、遺言の無効を前提として、遺言の内容と違う内容の遺産分割や、あるいは補償の金銭等を求められることもあります。
せっかく残した遺言ですから、有効なものにするため、遺言を残す方がある程度、「これは本当に私の意思で書いたものだから、守ってほしい」という意味でも、対策をしておいた方が良いと思います。
まず、自身が遺言を残せるだけの財産管理する力がある(いわゆる認知症ではない)という内容の検査を病院で受けることが考えられます。病院の先生の下で検査を受けることにより、遺言を書いた時期の心身の状態がある程度はっきりしますので、残された家族の間でのもめ事をある程度、防ぐことができます。
次に、誰かの意思ではなく完全に自分の意思で遺言を残した、という証明のためには、公証役場に行き、公証人の前で遺言をする(公正証書遺言を書いてもらう)ことが大事だと思っています。
最近、自筆での遺言を見つかりやすくしたり、財産の目録をパソコンで書けるようにしたり、法務省で遺言を保管する仕組みができたりしましたが(※本日現在の法務省ホームページによると2020年7月10日施行のようです)、「あの字はお父さん(お母さん)の字ではない、〇〇が手を添えたんだ」という主張をされることを防ぐこともできます。
意思確認の意味でも、弁護士が遺言書の中身を書く場合であれ、最終的には公正証書遺言の形で残すことが良いのではないかと、僕は今のところ思っています。
(もちろん、自筆証書遺言の書き方や、遺言書に書く内容に関するご相談も承っておりますし、逆に、遺言書の有効無効に関する内容のご相談も承っておりますので、よろしければ、ご相談頂ければ幸いです)
今回のコラムは長くなりそうなので、このあたりで分割したいと思います。続きは次回にしたいと思います。