井上大輝法律事務所

【相続】遺言で気をつけたいこと(3)

2019年05月16日コラム

(3)遺言を残すことで、かえって残された家族の間でもめ事がおきないか

遺言の内容によっては、残された家族の間でもめ事が起きてしまう場合もあります。

遺言が複数枚に分かれていて、併せて読むと何通りかの解釈ができるとか、遺言の内容をよくよく検討してみるとある家族に財産が集まりすぎる、などといった場合です。

前の遺言と後の遺言があって、2つの遺言の文面を併せて読むと内容のつじつまがあわないときは、後の遺言が無効でない限り、後の遺言が優先される場合が多いかと思います。つまり、前の遺言の内容が、遺言を残した人の心境の変化によって撤回されたと考えることになります。

ところが、遺言を残した人が必ずしも撤回のことを意識しているかと言えば、そうではありません。前の遺言と後の遺言、文面上はつじつまがあわない場合でも、残される家族に対しては、お父さん(お母さん)の頭の中にあるつじつまの合う解釈(又は本当に残したかった方の文面)に従って遺言のことをお話されていることも多いため、後になって残された家族が、「お父さん(お母さん)から聞いていた話と違う」、ということになってしまいます。

遺言を残した人の真意がわからなくなると、家族の間柄である以上、仲が良いと思っていても実はわだかまりがあったり、一見仲が悪いように思えてもいざというときには頼りになったり、力を貸してくれる方だったり、関係性は色々ですから、かえって残された家族の間で無用な争いが生まれてしまうこともあります。

したがって、遺言を書き直したり追加したりする際には、手間はかかりますが、前に書いた遺言に関する内容も含めて新しく書くか、少なくとも前の遺言についてどういう扱いをするのか(前の遺言の内容を維持するのか、撤回するのか)をはっきり書いておく方が良いと思っています。

また、遺言をこれから作る方の中には、〇〇には渡したくない、〇〇に世話になったから多めに分けたい、というご希望もおありかと思います。

ただし、今回の相続法改正で手続内容に変化はあったのですが、「遺留分」という制度は維持されており、兄弟姉妹以外の相続人(主に配偶者や子供)の渡す財産をゼロにすることは、実質的に難しいです。

大雑把に言うと、〇〇から虐待されていた、とか、〇〇の恩知らずさはひどい(非行が激しい)、という場合に、家庭裁判所で「相続人廃除」という手続を取るか、「相続人から廃除する、その手続を〇〇に任せる」という内容の遺言を残すことにより、相続人から除外するという方法もなくはないですが、相続人から除かれた場合の家族の不利益が大きいことから、相当慎重に判断されます。

そこで、現実的には残すことになる財産の価値を調べた上で、ギリギリ残された家族の一方の「遺留分」(配偶者や子供の場合、基本的に相続分の2分の1)を侵害しない程度で財産を配分するということをします。廃除を検討する際には、これから遺言を残される方や財産を継ぐことになるご家族の方がいかに記録を残せるかの勝負になります。

相続法改正に関する手続の内容の変化は、今後、コラムに書いていければと思います。

長くなりましたが、遺言相続に関するコラムの1本目を書き終わりましたので、次はテーマを変えて連載していきたいと思います。